「あいつら…遅いな。気ぃきかせたつもりか?」




ナルが、料理台の方に視線をやりククッと笑う。




だけどいつものような傲慢な表情はそこになく、なんだか勢いがないように見える。




これ以上、ナルと顔を合わせるのが辛い。



そして…すごく気まずい。



黙ったまま目を合わせないでいると、ナルが不意に立ちあがった。




「ああ…そうか。気が利かないのは俺の方か、悪かったな」



えっ…そんなことないよ。




ふたりは、ナルがいても気にしないっていうか、むしろ大歓迎だと思う。



あたしの態度が、ナルを追い詰めてる?



清香さんにイジワルされたとはいえ、あの場面で助けてくれたナルにこんな態度ってないよね。



「待って、行かないで」



気づけば、無意識のうちにナルの腕を取っていた。



「俺を惑わせるなよ…」



気づけばナルが、あたしの腕を掴んでいた。



そして…すごく辛そうな顔で、あたしを見つめている。