ナルが婚約すれば、もうなにもされないかもしれない。


とはいっても、あのナルのことだから…


気が変わったとかって言って、婚約していてもあたしを束縛してくるかもしれない。

 
それがハッキリしない分、曖昧に過ごすこともできなくて。


突然あたしを受け入れてくれた、優しいおばちゃん。


そんなおばちゃんに迷惑をかけたことが、一番心苦しい。


だからあたしは学校を去ることに決めたんだ。






「なにか手伝えることがあったら、言って」


サギくんはそう言い残して、自分の席に歩いていった。


ありがとう。


その気持ちだけで、十分だよ。


あたしも席につこうと思ったんだけど、その足で学園長室に向かった。


――トントン。


扉をノックする。


…ここに初めて来た日を思い出す。



あの日、初めて…



ナルと出会ったんだっけ…。



サギくんからは、極悪非道な独裁者って聞かされた。


最初はひどいヤツだったけど、


知っていくうちに、


ナルにもそれなりの理由があって、


ホントは、そこまで嫌なヤツじゃないことがわかった。


少しずつ変わっていくナルに、


あたしは……。