「あのね……ナル……。こうやってゆっくり話せるのは、多分今日がもう最後で……」



「俺を追いこむなよ……学園で、お前と普通に話すことすら、ダメなのか?」



「そうじゃないよ……あたし……」



「悪い。今日はこれ以上、話せそうにない」



「え……」



「ツラいんだって。こんなに……人を愛しいって思ったのは、初めてだから。

だけど、お前に拒絶され……俺は他の女と婚約しなきゃならない。それがどういうことなのか、お前も少しは察してくれよ」



あたしはそれ以上、なにも言えなくなってしまった。



いなくなると伝えたところで、余計にナルを苦しめるのかもしれない。



それならいっそ、黙って消えた方がいいのかも。








「わかった。そろそろ学校に行く時間だから、着替えるね」



「カギは、オートロックだから」



「うん……」



ナルは部屋に置いてあった大きめのバッグに制服と通学カバンを詰めると、



それを背負って部屋を出ていった。