「坊ちゃま、それはなりません。奥様が、お許しにならないかと」


心配そうに見つめる運転手さんを見て、ナルがため息をついた。


「そうだな…婚約者以外の女を連れて行っても、門前払いをくらうだけか」


――ドキッ。


そうだった、ナルには婚約者が…。





ボーッとしていたら、後部座席に押しこまれた。


「送ってやるよ」


「ナルは、今日はあの部屋に泊まらないの?」


「お前が一緒に泊まるっていうなら、考えないでもないけど?」


怪しい笑みを見せられ、あたしの鼓動か跳ねた。


「ばっ、バカ!泊まるわけないでしょ!?」


「だよな。まぁ、そのうちお前の方からお願いしてくるようになるのを、気長に待つとするか」


「するわけないしーっ!」


もうっ!


あたしをなんだと思ってるのよ。


今日一日でいろんなことがありすぎて、


家に帰って着替えをすませたあと、


疲れきってすぐに寝てしまった。





朝起きると、


ナルからおはようのメッセージが届いていた。


その内容は、


いつになく、


甘い……。



シンデレラの魔法はとけてしまったけど…


プリンセスの魔法は、


まだ有効みたい……。