ナルに抱かれたまま階段を下り一番下まで行くと、フロアにそっとおろしてくれた。



「歩きづらいか?」



「うん……」



「シンデレラの靴をイメージしたんだ。今のこの時間は、お前にとって一時の夢だからな」



なっ……。



12時になったら、あたしはもとのあたしに戻るって意味だよね。



わかってはいたけど、失礼すぎない!?



むきーって反抗しようとすると、ナルが笑みを浮かべる。



「だけど、俺のところに来れば……いつだって、夢を見せてやる。俺だけが、お前をいつでもプリンセスにしてやれる」







……うーん。



怒る気が失せた。



この人、本気で言ってるのかな。



ホントにあたしのことを……?



昨日会った婚約者の女性だって、幼なじみの清香さんだって、



家柄もそうだけど、美人で品があってナルにふさわしい。



そんな彼女たちより、あたしをいいって思ってくれているんだとしたら……。