「家は?いつ向こうに移るの?」
「え?あぁ、それはまだ…」
「わたしとしては、ずっといてくれていいんだけどね」
そう言っておばさんは、頭に乗っていたタオルを容器の水につけた
「でも、隣ですから」
「それもそうね。」
ふふと笑い、何か用があったら呼んでねとおばさんは部屋を出て行った
この家の隣には、俺が前住んでいた家がある
一軒家
俺が1人で住むには大きすぎる
両親も一緒にこの町に帰って来ると言う提案を断ったのは、なにか特別な理由があったからじゃない
ただもう一度確かめておきたかったんだ
この町に俺の居場所があるかどうか
そしたら――あった
なにも変わらずに
忘れてしまっていた温かい笑顔がここには
ツ―――と何かが頬を伝っていく
俺が失ったもの
手にしたかったもの
手に入れたもの
それらが互いに絡み合って俺の中に深い闇を落とす
すべてを溶かしてくれるのは
『終聖』
あいつしかいないんだ
視界がぼやけていくなかで俺はゆっくりと目を閉じた

