「葵」


廉に名前を呼ばれても手を止めない


あと一口で私の皿がからになる


最後のひとくちを食べようとした時


胃がぎゅっと誰かに握られたように痛み


私はトイレに駆け込んだ


トイレに入るやいなや胃の中身を全て吐き出す


何度も何度も吐き


胃液も吐いた


それでもまだ吐き気がおさまらずに吐こうとすると血がべっとりと便器についた


自分の体に苛立ち私は吐きながら身体中爪を立てて かきむしった


「葵、開けろ」


トイレのドアの向こうから廉に声をかけられて私はトイレに鍵をかけた


こんなからだなんて要らない


こんな自分が大嫌い


いっそのこと消えてしまいたい……