「物心ついたときにはもう施設にいて、そこで小学校まで過ごしたんだ」


施設…聞き慣れない言葉に戸惑う。
こういうときどうすればいいのかわからなくなる。


「僕は両親に捨てられたんだろうなぁって。だから両親のことも兄弟がいたかさえもわかんないんだ。
でもそんなとき、ある夫婦に引き取ってもらえて。それが今の家族」


それからいろんなことを聞いた。
施設にいたときは、今では考えられないくらい冷たくて、一言も喋らないような子だったとか、引き取ってくれたところはすごくお金持ちだとか。

温かい家庭で、大事に育てられたらしい。


「この家も、家がなくて困ってる友達がいるって言ったら、作ってくれたんだ 」

「その友達って？」

「泉のこと。大学の先輩だったんだけど、すぐ仲良くなって先輩後輩と言うより友達だったかなぁ」


思い出すように話すたっくん。

いずみんとたっくんって大学が一緒だったんだ。
知らなかったなぁ。