「あ、そうだ、えっと…」

「何してんだよ、早くこいよ」

「いや、だから違うの」

「何が?おい、扉閉まるだろ」


なんて言えばいいの!?
さすがに先生の家に住んでるとは言えないよね…?


「あ、今日ちょっと買い物頼まれてて。この先の駅のさ」

「あ、そうなんだ、じゃあ、着いていこうかな」

「え?ん?いや、くんな。こなくていい。バイバイ」


その場に居座りそうな雰囲気の蒼太を電車から押し出した。
納得行かなさそうな顔の蒼太だったけど、プシューと扉が閉まったので、あたしは笑顔で手を振った。
蒼太も首を傾げながらも、あたしに手を振っていた。
やがて電車は動き出し、蒼太が見えなくなるのを確認して座席に座る。

咄嗟についた嘘だけど、今思えば引っ越したって言えばいいんだよね。
…ほんとに、馬鹿はあたしだ。