「泉!遅刻する!早く!」

「拓海っち、そんな引っ張んなよー!」


そんな声が聞こえてきたと思ったら、リビングのドアが開いて東城先生と和田先生が入ってきた。

丁度洗い物を終えたあたしは、先生達を不思議そうに見た。


「あ、そうだっ」


あたしと目が合うと、何かを思い出した顔をしてあたしのところまで近づいた。


「はい、これ」

「えっ」


手をズイッと差し出すと、手の上のものをあたしに見せるようにした。


「鍵…?」

「この家の鍵だよ」


取れと言わんばかりに、手を少し上げた。

何の変鉄もない普通の鍵。
受けとると、東城先生の温もりが鍵から伝わってきた。