「俺、母親が病気で亡くなったって言うたやん?
それが5年前やから小学6年のとき。
何が何かわからんぐらい辛くて泣いて、どこか遠くに行きたくて、住んでた大阪からこの東京まで一人で来た。
でも着いたはいいけど、全然土地とかわからんしどうすることも出来んくて、ふと、東京に住んでる龍にぃのこと思い出したから電話してみてん。
じゃあ、暗い声でごめん、今は行けないって。
まぁ結局そのとき全然知らんかった拓海にぃが来てくれてんけどな。」
そう言えば、前にたっくんがそんな話してたかも。
そのあとは、楽しいとこ連れてけって透くんが言って、遊んだんだっけ。
「そのとき、龍にぃは何をしてたか」
遠くから来た小さい透くんのところに行けないくらいの理由。
それは私が思ってたよりも残酷で、苦しいものだった。
「龍にぃはその頃18歳、高3やな。
彼女がおってん、3年間ぐらいの付き合いの。
それが、小百合(サユリ)さん」
「あ…そういえば、龍ちゃん寝言でその人の名前呼んでたことある…」
いつだったか、保健室で寝てた龍ちゃんはうなされながら、涙を流しながら、名前を呼んだ。
「やっぱりまだ龍にぃは苦しんでるんやな」
透くんは、やっぱり目を伏せて軽くため息をついた。
