「怪我ですか」


「あ、コケちゃって…」


「ドジ。おいで」



そういうと、消毒の用意をし始めた龍ちゃん。


モヤモヤ。


いつも通りの龍ちゃんを見ても、消えない気持ち悪いこの感情は一体何?


龍ちゃんは手際よく私の傷を消毒して絆創膏をはってく。



「ん、出来た」



そういうと、私からスッと離れようとする。


当たり前のこと。手当てが終われば私はそのまま授業に戻る。


モヤモヤ。



「…龍ちゃんっ!」


「ん」



ギュ。



私は離れようとする龍ちゃんの白衣を咄嗟に掴む。


眼鏡の奥の深い色をした目が私を捕らえる。



「り、龍ちゃん…」



ダメ…龍ちゃんの迷惑になっちゃう、早く戻らないと…


そう思えば思うほどモヤモヤして寂しくて苦しくて…。



「まだ他に痛みますか」


「龍ちゃん…なんか変なの…モヤモヤして苦しいの。さっきここに来るまではなんともなかったのに。」



そう言い終わるが早いか否や、龍ちゃんは私の手を引いた。