この世の全てが敵だとしても



「噂で聞いちゃったんだけどねぇ。」


机に肘をついた久実は上目遣いをするように中西を見て、そう言った。


“噂”

その言葉に何か心当たりでもあったのか、


中西の表情には焦りが見え始める。ピクリと大げさなほどに震えた中西。

それは、久実もわかったのだろう。


「あれ?心当たりでもあるの?」

わざとらしくそう問う。


首を傾げてニコリと笑う久実は、その仕草だけならば、悪気なんて一切なさそうだ。

「そ、そんなものない。」


ハッと威勢を張る中西も、先程までの怒りが吹き飛んだかのように声に力がなかった。