この世の全てが敵だとしても




「なっかにしぃー。」


久実は一応教師である担任を、敬意が少しも現れないような態度で呼ぶ。


「っ…。」


歯を強く噛み締め、手を強く握り締めている彼を、助けようとするものはいない。


そんなことを、邪魔をしたらどうなるかなんて考えるまでもなかった。


先程までは中西を馬鹿にした笑い声で溢れかえっていた教室も、静かだ。


ある者は楽しそうに、残酷な瞳で彼を見て。

ある者はとばっちりをくらわないようにと目をそらし。

ある者は良心でも痛めているのだろうか?
悲痛な瞳で彼を見る。





…私?

私はきっと他人から見たら無表情だと思う。

これでも少し楽しんでいるのだが。

私は“目的”のためへの事が終わるのを静かに傍観するだけだ。