指が跳ねる。 そこにはあの頃と変わらない音がある。 ただ、違ったのは優ちゃんの表情。 あんなに楽しそうにピアノを弾いていた優ちゃんが、全く楽しそうじゃない。 優ちゃんの表情は曇ってる。 「…っ、」 その時、優ちゃんの指が躓いた。 鍵盤から離れた右手は震えている。 「…ゆ、うちゃん?」 優ちゃんの右手首は左手に強くつかまれている。 もしかして痛い、の?