男の子の名札には、『三年 伊藤』と書いてある。わ、先輩だったんだ!?

 先輩だってわかってしまうと、余計動けない。

 伊藤先輩の顔が迫ってくる。

 私は、ギュッと目を閉じた。

 私の初(ファースト)キスは、この人に奪われちゃうんだ!!

 唇に、温かい感触。

 これが、キス?初めてキスするから、キスがどんな感じかはわからないけど、さすがに鼻までおおわれることはないよね?

 なんか、鼻までおおわれてるんだけど…!

 この人、どんなけ唇分厚いんですか!?

 なんて思いながら、恐る恐る目を開ける。

「!!」

 私は、キスなんかしていなかった。

 私の口と鼻を、誰かの手が覆っている。