玲が見たいと言ったのは、『アメリカのとある川で出会った僕ら』なんていうロマンチックな恋愛映画だ。

 見たがる映画の好みも、美紀と玲は違う。

 俺は映画の好みなら美紀の方が好きだ。そんなロマンチックな映画なんか好きじゃないし、何より俺らが出会った場所は渋谷の古びた居酒屋だから、さ。

 でも俺は、玲のことが好きだ。お人好しな俺が、あの日美紀に分かれを告げてやらなかったら…、玲を送って行く役を引き受けなければこの恋は始まらなかった。

「…お前を送ってやったのが運のつきだ」

 俺は玲の隣に立って、冗談めかして言った。



     fin