はじめてを、おしえて。



「大丈夫。

こいつの話は、俺が聞くから」



ハッと顔を上げると、師匠がきょとんとした顔をしていました。


目の前には、ボクを隠すように直立した藤原くんがいます。



「……行こう、斉藤」


「え、あ……」



藤原くんは師匠の返事を待たず、自分の自転車をおいてあるところにボクを引っ張っていきます。


戸惑いながら、ボクはついていく他ありません。


背後では、「ふっ」と低くて小さな笑い声が聞こえた気がしました。


そちらを振り向くと、師匠が口パクで「よかったな」と言っているのが見えました。