師匠は真っ赤になって、ボクを怒鳴りつけます。
裏切り者。
それは、ボクにさきほどの出来事を思い出させてしまう言葉でした。
裏切り者……。
そうか、師匠が言うなら間違いない。
ボクは、裏切り者なのだ……。
「お、おい、どうしたんだよ。
泣くなよ、なあ」
込み上げてしまったものを耐えていると、師匠が慌て始めました。
「斉藤……?」
「な、なんでもありません……」
「……何でもなくて泣くか?
このままじゃ里美に怒られる。
とにかく、移動するぞ」
師匠の大きすぎる手が、ボクの肩に触れようとします。
しかしそれを、もう一つの手が防いでしまいました。



