でも、師匠はイケてるって言ってくれたし……。
ボクは悶々としたまま、デッサン用の石膏像を見つめました。
どうしよう。
今日はこのまま帰ってしまおうか。
でも。
藤原くんが、せっかく了承してくれたのに。
『嬉しかった』なんて、言ってくれたのに。
……ええい、ままよ。
ボクは告白するわけじゃない。
ただ、話をしにいくだけなのです。
メイクは、そのための勇気を出す魔法。
完成度は低くても、胸に宿った勇気は消えないのです。
里美先輩が応援してくれた。
師匠が励ましてくれた。
ママが協力してくれた。
これだけ後押ししてもらっておいて逃げるのは、卑怯者のすることです。
ボクはもう、弱虫でいたくないのです。



