恋人の余韻





我が社のただ一人の若きSE(システムエンジニア)である夏目くんは、日頃から皆に頼りにされ有能ぶりを寡黙に発揮している。

そうしていまも、PC環境の不具合を正すときのような冷静さで、密通はしてないにしても不義を打ち明ける彼女に向き合っているのだ。


「でも、私には別れる必要、あるの。
夏目くんといるのは居心地がいいし、夏目くんを好きな気持ちが消えたわけではないの、でも舘野さんを苦しいくらい求めているこの気持ちが何なのか私は知りたいの、それには、まっすぐ、向き合わないといけない」

私が思いをめぐらせてたどたどしく説明するのを、夏目くんは顔色も変えずに見ていた。
そうして熱い小龍包をゆっくり飲み下してから言った。

「希伊菜がどう想っていようと、現時点で舘野さんとはプラトニックなんだから、僕が構わないんなら問題ないんだよ。
君がその派遣の舘野さんと両思いになったら、身を退くかな……、それは約束したっていい」


ああ、と私は途方に暮れる。
俯いてレンゲの中の小龍包に箸を入れる。
油を載せて少し光るスープがあふれ出てくる。