恋人の余韻




私は、冷静な夏目くんの色白で淡白な面(おもて)を暫く見つめていた。夏目くんのすっとした鼻筋の両脇に消えない眼鏡のあとがある。


「私、気持ちを打ち明けると思う。
勘違いかもしれないけど、舘野さんは、普通の女性とは異質なの、うまく言えないけど、彼女と出会ってまだ1年にも満たないけど、打ち明けても大丈夫な人だって思える。
これは男女のとは違うし、だから仕事も気まずくなるかもしれないから、慎重に考えた上で」


舘野さんは、レズビアンではないかもしれないけれど、口の堅い人だというのは確信していた。私は、自分がレズビアンかもはっきりしないのに、会社に噂として広まるのは嫌だった。


「打ち明けてしまえば、答えを迫るわけだから、僕には希伊菜と舘野さんとの付き合い自体が疎遠になる可能性もあると思えるんだけどな。
だから、いま慌てて僕らの関係を壊す理由はないよ」