恋人の余韻





通りの店々から、長く知っているのに輝きを失わないクリスマスソングが漏れ聞こえている。

私はふと思いついて、夏目くんに尋ねた。

「夏目くん、どうして。別れ話が寝耳に水ではなかった、って言ったでしょ、さっきお店で」

ああ、と夏目くんは答えた。

「希伊菜がいま一番職場で仲良くしてるのは舘野さんだろ、なのに僕には彼女とのことを話題にしないから変だなとは思ってたんだ。
希伊菜は学生時代、セクシャリティが分からなくて迷っていた、って聞いていたから、もしかしたら舘野さんのこと、友達以上の気持ちで見てるのかもしれない、とは思ったけど。
舘野さんがレズビアンの可能性は確率的に低いし、僕は知らないふりをしておこうと思ってたんだ。
それに、希伊菜、人生って長いんだよ。結婚とか、子どもとかさ、そういう未来、考えたことないの?
僕は、それを君にあげられるんだ。
その分、舘野さんより頭一つ抜けている気でいるんだ」