私たち家族の行きつけの店は、食堂から五分自転車をこいだ所にある。

 小さなスーパー店の駐輪場に自転車を止め、中に入る。なんだかシャンプー一つ買うためだけに来たというのは恥ずかしくて、私は他にほしいものがなかったか考え始めた。

 特に何もないなぁ、そう思ったところで店のスポンジが汚れ始めていたことを思い出した。

 スポンジと、それから歯ブラシでも買ってこうかな。私は籠を片手に商品の陳列している棚へ歩き出した。

 買いたかった物を籠に入れてレジに並ぶ。

「次の方」

 あまり客がいず、閑古鳥が鳴きそうな店のレジはがら空きだった。だから私の順番はすぐに回ってきた。

 カウンターに進むと、店員に商品を渡す。そこで私は店員さんの顔を見て声を上げた。

「幸助!」