……。
 手紙の内容は以上で終わっていた。
 
「ど、どうしよう。私、井上昂明の呪いで死んじゃうのかな?」
紫乃さんは手紙を読み終えると、ガタガタと震え出した。
 徹さんは紫乃さんの肩を抱いて落ちつかせようと試みる。
「大丈夫。大丈夫だ。もう井上昂明は死んだんだ。そんなのはただの迷信にすぎない」
 しかし、紫乃さんは泣き始め、手紙を握り締めて叫んだ。
「でも……でも。美也子だって、きっと呪われて死んだんだよ! 卒業して、白血病になって死んじゃったじゃない! 最後には病院を抜け出して……ここで、この学園で死んだじゃない! きっと井上昂明が最後に呼んだんだよ!」
 美也子さんは学園を卒業後、3年後に死んでいた。それもこの学園で。
「淳さん、本当に井上昂明の呪いなんでしょうか?」
 私は学園の歴史を詳しく調べたという淳さんに救いを求めた。
「……わからない。確かに過去の事件は井上昂明の呪いによるものも多いだろう……。でも、死の宣告が紫乃ちゃんに下ってからもう10年だ。いくらなんでも遅すぎる気もする」
 淳さんの言う事ももっともなように思えた。
 井上昂明の呪いによる美也子さんの変死。そして今になって紫乃さんを脅かす10年間に渡る死の宣告。
「私……怖い」
 紫乃さんが崩れ落ちたその時、カプセルに入っていた手紙が二枚重なり、信じられないことが起こった。
 パアアア。
 なんと、二枚の手紙が蝶のように羽ばたいて窓から飛んでいったのだ。
「な、なんだ! 一体何が起きたんだ?」
「わ、わからない、でも、とにかく追うんだ!」
 紫乃さんをかばいつつ、私たちは光の蝶と化した手紙が飛んでいく方向へと向かった。
 
……いったい何が起きているのか? 感動を与える筈のタイムカプセルが、紫乃さんに突きつけた突然の宣告。
 いったい手紙に書かれた内容の何が原因なのか? そして井上昂明の呪いとは? とにかく今は蝶と化した手紙を追うしかない。

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