「紘紀、俺に隠さずに教えてくれ。」
あの人が残酷にも紘紀に問う。
「っつ・・・・・・。」
「貴方は残酷な人ね。」
あの人に向かって笑って言葉を並べていく。
「俺が・・・・・・・・残酷??」
少しだけ顔を歪めて言葉の意味を探すあの人は前と変わらない。
「紘紀、明日ね。」
あたしはあの人の腕を掴んで空き教室へと向かう。
何をするか??
1つしかないでしょ??
「こんな所に紘紀を置いてまで何しに来たんだ??」
あの人が話す。
「知りたいんでしょ??あたしと紘紀の間に何があったのか。」
目を合わせることが無いように少しだけ伏せ目がちに話す。
「・・・・・・・夕希・・・・・・」
久し振りにあの人から名前を呼ばれた。
無意識に顔があの人の方を向く。
「・・・・・っつ・・・・・」
ただ、あの人はあたしを真っ直ぐに見つめていて。
その眼差しはあの別れを一方的に告げた日と重なって見えて、
「・・・・・・痛いな・・・・・・」
ポツリッと呟いた言葉だった。
「ゴメンな。」
その言葉と共に身体が暖かいものに包まれる。
あの人にあたしは抱き締められていた。
「・・・・・・離して。」
「夕希、俺はっ!!」
チュッとリップ音と共にあたしはあの人の口を塞いだ。
「今から教えてあげる。」
「夕希っ!!俺の話を聞いてくれよっ!!」
さっきよりも力強く抱き締められた。
・・・・・・・・・・本当はあの人の言葉が聞きたい。
だけど、あたしには聞く権利はない。
「身体でお話するのがあたしなの。」
あの人の顔が泣きそうに歪んだのは・・・・・・・何故??
「榊原、最近は学校に来てないんだって??ダメじゃない。ちゃんと来ないと。」
「学校に来たらっ・・・・・また俺とやり直してくれるか??」
あの人は震えた声で言った。
「それは出来ないわ。あたしは、たくさんの人達と寝なくちゃいけないから。」
クスッと笑って、あの人の顔をよく見る。

