「…………………千里っ…………。」






震える声で千里の名前を呼んだ。






「………………。」





千里がゆっくりと顔をこちらに向ける。






「紘紀か……………。」






千里は俺に『笑った』






だけど、俺はその笑顔に笑い返せなかった。






初めてこんなに千里の切なそうに笑う顔を見た。






何も言えなかった。






夕希の手をただじっと力強く掴んで見つめている。






ただそれだけのことなのに、俺は何故か『負けた』と思った。






夕希に対する想いが分かったから。






「なぁ、千里…………………。」






なんでお前はそんなにツラそうな顔をしてんのに。






なんでそんなに夕希を好きだと分かっているのに。






「どうして夕希を泣かせたんだ??」





千里の肩がピクッと少しだけ揺れる。





「なんでそんなに夕希を失うことを分かっててあんなこ「俺のせいだよ。」」







千里が俺の言葉を遮って言った。






「夕希を泣かせたのも苦しめたのもこんな結果になったのも全部……………俺のエゴだったんだよ。」






「エゴ??」





「夕希が隣に居ない生活で俺はこれから笑って生きなきゃいけないんだな……………。」






そう言って、夕希の手を離した。





あまりにもその出来事が儚すぎて……………。






「もう1度、夕希に好きだって伝えろよ。」





何故か、俺は千里を応援していたんだ。