あたしは、少しだけ歩くとそっと空を眺めた。
「忘れなくちゃいけないのにズルいよ………。」
掴まれていた腕が今でも熱を持ったかのように熱い。
「馬鹿っ…………。」
あんなに昨日、泣いたのにあたしも懲りないなぁ………。
視界が涙で段々とぼやけていく。
「泣くなっ…………。」
グッと目頭に力を入れて零れ落ちそうな涙を抑える。
「もう泣かないって決めたんだから………。」
もう1度、足を前に踏み出して職員室へと向かった。
溢れだしてしまいそうな気持ちを必死に抑えながら………。
あたしは目の前の扉を開ける。
そこは職員室ではなく……………。
「ん~っ、気持ち良いなぁ~!!!!」
屋上に来ていた。
背伸びをして、たくさんの空気を吸う。
「ずっとここに居られれば良いのになぁ~…………。」
でも、この後に実紗と龍雅くんにちゃんとお礼もしないといけないし………。
それに、授業もサボるわけにはいかないしなぁ~。
「学校に来たくなぁい。」
子供のように愚痴をこぼした。
「なんであんなに泣きそうな顔しかしないのよ…………。」
あたしが見たかったのはあんなに泣きそうな顔じゃなくて。
「あたしの大好きな顔で居てほしいのに…………。」
千里、どうしてあんな顔をしたの??
なんでいつものように笑ってくれないの??
「千里…………。」
もう…………呼ぶことのない愛しい人の名前を最後に呟いて、あたしは屋上を後にした。

