「実紗??龍雅くん??」
あたしはそっと後ろを振り向いた。
そこに立っているのは……………。
息を切らして額に汗を滲ませる……………あの人の姿。
「っは…………はぁ……………。」
ゆっくりと息を吸ったり吐いたりして息を整えている。
「夕希っ…………。」
あたしの背中越しから実紗の声がした。
「夕希ちゃん…………。」
龍雅くんの声もした。
「実紗、龍雅くん。早く教室に行こうか!!!!」
あたしは何事もなかったかのように実紗と龍雅くんに話しかけた。
「なぁ………。」
「早く行かないとそろそろ時間ヤバいよね??」
「っっ………おいっ………。」
「よしっ!!!!今から走って誰が早いか競走だからね??」
「おいっ!!!!」
あたしの肩に不意に手が置かれた。
その手によってあたしは実紗と龍雅くんと話していたはずなのにそっちに気が行ってしまった。
「夕希っ!!!!」
あの人があたしの名前を呼ぶ…………。
「おはよう。」
あたしは営業スマイルを顔に張り付けた。
あの人はあたしのそんな表情を見ると、目を見開いている。
「手、退かしてもらっても良い??遅刻しちゃうから。」
そっとその腕をあたしは退かした。
「実紗、龍雅くん。あたし用事あるの思い出したからあたしの鞄だけ持ってってくれる??」
「夕希っ………。」
「夕希ちゃん、用事って………。」
2人の焦った様子に少しだけ、笑ってしまった。
「職員室に行かなくちゃいけないの。頼んでも良いかな??」

