「夕希…………。」
朝から実紗の泣きそうな顔を見るのはちょっとキツイかな………。
「実紗、あたしね??」
その瞬間、あたしのケータイが震えだした。
♪∼♪~♪~♪~♪∼♪~♪~♪∼♪~♪~♪~♪~♪
「この着信音はあたしのじゃないよ??夕希のじゃない??」
「うん、だけど出なくて良いんだ。」
「えっ??なんで??」
実紗があたしの珍しい行動に驚いている。
そう、あたしはどんなに忙しくたってケータイは気にしていた。
それは………千里がいつかあたしに連絡してくるんじゃないかって期待があったから。
「夕希、本当に良いの??朝から電話なんて急用かもよ??」
「本当に良いの。だってこの着信音は………実紗、誰だか分かるでしょ??」
今、あたしと実紗だけの部屋に絶えず響いてるこの着信音の曲は…………。
実紗はあたしの顔を見て、少しだけ気まずそうにした。
それが実紗の答えだと思ったから。
「だから良いの。よしっ!!!!学校に行こう!!!!」
この着信音の相手は…………あたしの大好きな人だから。
でも、あたしはもう何も忘れてしまったから良い。
あたしは変わらないといけない。
あの人が居ない生活で笑って、泣いて…………そんな生活に慣れなくちゃいけない。
だから、電話にも呼びかけにも答える気はない。

