……………初めて千里にキスをした。
「夕希………。」
千里の瞳がユラユラと揺れている。
「今は何も聞かないで抱いてよ…………。」
今だけは千里を独り占めしたいから…………。
「っっ…………。」
何かを押し殺すような声が千里から聞こえた。
「千里??」
千里を見ると、片手で口を覆っている。
「ったく、そんなこと俺以外に絶対に言うなよ??」
「何が??」
「なんでもない…………。」
千里は顔を隠していた手を退けると、そっとあたしを抱き締めてきた。
「……………怖かったら、嫌だと一瞬でも思ったら言って??」
「千里??」
千里の声はどこか震えているように感じた。
……………泣いてるの??
そんな風に感じてしまうほどに千里が…………儚く感じた。
「俺、心臓がバクバク。」
千里はあたしの片手を取ると、そっと胸に引き寄せた。
ドクンッ ドクンッ ドクンッ
いつもの落ち着くような心拍数はなくて……………。
「緊張して余裕がないかも…………。」
千里の表情は少しだけ強張っている。

