なんで今までは他の子に優しくしてたのにこんな時にそんな事を言うの??




あたしの決心が揺らいでしまう。




今日、別れると決めたのに…………。




その千里の優しさに触れたら、温かさに触れたら…………。




やっぱり『好き』だから、だからこのままでも良い。




そう少しでも考えそうになってしまう。




あたしは千里に笑って、手を握り返した。




「行こう??」




千里の言葉には何も返さずにあたしは笑うことしかできなかった。




頷いてしまえば、あたしはまた同じことの繰り返しだから。




今日はただ『千里の彼女』として過ごしていたい。




何も考えずに、ただこの幸せに浸っていたいから。




このデートが終わったらあたしとの関係が終わるなんてことは忘れていたい。




「千里、好きだよ??」




今だけは素直になりたい。




千里はあたしの言葉に目を見開いて…………。




「俺も夕希が好きだよ。」




そう言って、あたしに甘いキスをしてくれた。




その言葉を幾度も他の子に言っているのを聞いていても、そんなことはどうでもいいと思えてしまうほど今は幸せだった。




もう、この先に何もいらないから。




あたしは『今日』を幸せにしたい。




何もいらない。




もう望んだりしないから、今だけは『あたしだけの千里』で居てほしい。




「千里、今日は笑って居ようね。」




「当たり前だろ??泣くことなんてねぇよ。」




そう言ってあたしの頭をグシャグシャと少しだけ乱暴に撫でる。




「髪の毛がグシャグシャになる~!!!!」



あたしは千里の手を揺さぶってもう1つの手で整えた。