「千里はそんなに酷い人じゃないよ??」
「酷いじゃない、こんなに夕希はあの男を想ってるのに。」
そう言って、切なそうにあたしを見る。
「実紗??あたしは千里の彼女なんだよ??彼女なんて気持ちが通じないとなれない『特別な存在』でしょ??」
あたしが自分に言い聞かせるかのように言った。
そう、彼女は『特別な存在』だから大丈夫。
あたしが何か気にすることではない。
あたしは千里の彼女。
それ以外に何をあたしは望むの??
「夕希、なんでそんなにっ………………。」
「どうしたの??」
あたしはニコッと実紗に笑いかけながら言った。
「っっ……………なんでもっ………ないよ………。」
なんでそんなに実紗が泣きそうになっているのか考えなくても分かる。
今のあたしの表情は人形のように、氷のように冷え切っているんだ。
幾度なく、笑ってきた。
悲しくないように、淋しくないように。
全ての事を誤魔化すかのようにあたしはただひたすら笑った。

