「なぁ、美咲。もう少しの間、遠距離になるけど我慢出来るか?」


そう聞いてくる翔太に顔を上げて答えた。


「何年、遠距離やってたと思ってるの?」


「そうだったな」


そう言いながら、顔を見合わせて笑いあった。

翔太の手が、不意に私の頬を触ってくる。

翔太を見ながら、ビクッと固まってしまう私の顔に、どんどんと翔太の顔が近づいてきた。

ドキドキし過ぎて、目を瞑るのも忘れる位緊張していた私。


私達の唇が重なり合った時、風が桜の花びらを舞い上がらせた。


まるで示し合わせたかの様な演出。


桜の花びら達は、重力を失ったかの様に縦横無尽に飛び回って居るように見えた。


幼い頃の口約束は、桜の木の下で始まり桜の木の下で終わりを告げた。

しかし、それは新たなスタートラインが出来たという事になったのだ。


唇が離れた瞬間


「翔太、大好き」


そう、愛の言葉を囁いていた。

そんな私に、翔太はもう一度優しいキスをする。


散りゆく桜の木の下で、私達の口約束は果たされた。


ヒラヒラ舞う花びら達に包まれながら……




    ―――END―――