「…うそ」


思わず口から漏れた言葉は、いきなり吹いてきた突風によってかき消された。


桜の花びらが、風に乗って舞い散る。


突風がおさまり、見上げたその中から現れた一人の背の高い男性。


「…美咲?」


座ったまま硬直する私に、低い声で優しく聞いてくる。


「翔太?」


今にも消え入りそうな声で、愛しい人の名前を呼んだ。


「本当に…待ってたのか?」


「うん」


頷く私を翔太は驚いた様子で見ると、手を差し出した。

その手に捕まると、簡単に私を立ち上がらせたんだ。

立ち上がると、より背が高い事を感じさせた。
あの時は、同じ位だったはずなのにね。


まだ、信じられない。


「本当に翔太?」


なんてマヌケな質問。
翔太は笑いながら


「免許証見せようか?」


と言ってきた。

ここに来て、私の名前を呼ぶのは翔太しか居ないのにね。