「おーはよー!!」

今日も元気なアイツが昨日とかわらず私にどついてくる。

クラスの中でも陰キャラな私にここまでちょっかいを出してくるのはアイツくらい。

「今日も相変わらずぽっちゃりだなー」

なにが楽しいのか私のほおを突いて笑うアイツ。

━━ 一応私のコンプレックスなんだけど…

そんなのもお構いなしなアイツは私に『ぽちゃ子』なんてあだ名を付けた。

「あー!ぽちゃ子チョコ食ってるー!俺にもチョーダイ」

横から私のお菓子を奪って嬉しそうに食べるアイツ。

甘党のくせに細身な体が私には嫌味でしかない。

「そーいえばさ!もうすぐバレンタインじゃね?ぽちゃ子あげる相手いるの?」

「渡す人なんていないから」

私はそっぽむいたままつぶやく。

「どーせあげる人いないんだったらさ、俺にちょうだいよ!チョコ大好き」

子供のようにはしゃぐアイツ。

好きな人がいないわけじゃない。

ただ渡せない理由がある。

つい最近までその人は私の存在に気付いてなかった。

その人に恋人ができて、ショックでやけ食いをして太ってしまうまでは。

当の本人は私の気持ちに気付くわけもなく、関係が他人から友人もどきになっただけだ。