この世界の国々の中で1番と言われるほどの広大な国土を誇る、リリカルド王国。
 回りを海で囲まれた、隣接国の無い、東西南北に広がった国土は、温暖、高温多湿、砂漠、寒さが非常に厳しい地域と様々な気候が分布。肥沃な国土と、豊富な天然資源に海洋資源、農産物、緑豊かな森林と豊富な水資源……。また諸外国との貿易も盛んで大変潤っていた。
 豊かさ故、他国から幾度か国土侵攻の歴史もあったが、高度な装備と圧倒的強さを誇る王国騎士団と、一般国民男子の有志からなる民間防衛兵、騎士団を退役したが、有事の際に兵となる予備役 (よびえき)などの強大な軍事力で、一度も侵略される事なく栄えてきた。

 メイミールアンの祖父王レドファラモス・リリカルド・キングラドロザス、通称”レドファラモス王”も偉大な王と呼ばれ、広大な国土を統率治めてきた。
 メイミールアンの父王ラグザンドラ・リリカルド・キングラドロザス、通称”ラグザンドラ王”に王位を譲ったのは、歴代の王の中では早い方だ。レドファラモス王48歳、ラグザンドラ王28歳の頃だった。
 ラグザンドラ王は、性質も穏やかで社交性にも富み、家臣からも慕われ、思い切った発想と才腕を発揮し、統率力にも長けていて、賢王とも呼ばれ人々に親しまれた。

 レドファラモス王は、王位を譲ってから2年間は、補佐として陰ながら支えてきたが、十分国を任せられると確信出来ると、お忍びで広大な国土の査察も兼ねて旅に出る事に決めた。
 国が豊かで栄えてると言われても、全てが完全と言う訳ではない。各地、小さな問題事や民の不満などはあるであろう。民の目線に立って、民の立場から国政を見つめ直してみる。そしてこれら見聞き自ら体験した事は、より国を栄えさせる力となるはずだ。国内査察と国元ヘの報告が済んだら、後は息子王であるラグザンドラ王に任せ、他国へも旅に出てみよう。王退位の後は、そうやって過ごしたいと、ずっと思い描いていた夢だった。