石の家に置き去りにされてから、家が改装修繕完成するまでの2週間の間は、浮浪者のような生活を余儀なくされた。 

 夜は大きな木の衣装箱の中で一夜を明かす日が続き、料理など全くした事の無いメイミールアンの食事は、城内通用門付近に陣取る商人から買った珍しい果物や菓子と菜園労働者から分けて貰った生野菜。

 体や髪は、石の家から少し行った所にある温泉源泉の付近の湖で洗い、ドレスもその時に一緒に洗濯し、衣装木箱の上に並べて干した。絹のドレスは水で洗うと縮んでしまって光沢も失われ、しわくちゃになり、とても見窄らしいドレスになった。

 いつも何も考えずに与えられた食事を食べ、用意されたドレスを着、そんな当たり前な事一つ一つ、人の手によって大変な手間がかかっているのだと言う事を初めて知った。そして、自分が恥ずかしいと思った。

 何も出来ない自分には、とても珍しく難しい事だけれど、庶民達は普通にこなして懸命に日々生きている。そして自分も早く何でも出来るようにならなくては……。

  ――当たり前の事を出来るようになる知識を、人に頼らずに得る事の出来る場所……。たどり着いた所は図書館だった。その頃から図書館通いが始まった。