「うん?」 自動ドアが開いて、赤や黄の木々がさざめく。 「…名前、教えて下さい」 緊張で心臓がバクバク言ってる。 静まれ、心臓。 冷たい風が頬を掠めて、頬の熱が徐々に冷えていく。 彼が口を開いたのは、多分ほんの数秒後。 だけどわたしにとっては、苦しいくらいの沈黙に思えた。 「青山だよ」 「…青山、さん」 口の中がパサついて、少し声が掠れていたかもしれない。 名前を呼ぶだけでこんなにも大変だなんて。