「野薔薇包みますねー」
「うん、お願いしまーす」
もくもくとピンクのかわいい花を包む。
ふわりと香る、柔らかい匂い。
「ねぇ、あずちゃん」
「はい?」
鼻をクンクンしていると、青山さんの凛とした声に呼ばれた。
見ると、青山さんは黄色の花の前に立っている。
「この花、おもしろい形だね」
ポケットみたいな花の形。
あの花に触れる人少ないのに、珍しいな。
「そうですね」
「黄色とか緑とか赤紫とかイロイロあるんだね」
ニコリと微笑む青山さんに、わたしは心底ホッとした。
先週みたいな寂しそうな顔じゃなかったから。


