「下の名前、何て言うの?」 「……杏に実であずみ」 優しい口調で尋ねられて、思わず目を逸らしてしまう。 わたしは自分の名前が嫌いだ。 小学校の時にはよく変だって言われた。 そんな読み方ないって。 そんなことくらい知ってるっつの。 「じゃあ、…あずちゃんだ!!」 でも青山さんは本当に楽しそうに笑った。 少年みたいな笑顔に、頬が火照るのを感じて慌てて俯いた。 ……気さくな人。 最初に喋った印象はそれだけ。