――――…
香澄と付き合いだしたのは、調度10年前。
中学2年の夏休みに入ったばかりの俺の誕生日だった。
そして、俺は今日で24になった。
「10年か…。長いな」
付き合い始めてから、別れそうになったり、喧嘩したりすることももちろんあった。
けれど、最後はいつもシロが仲を取り持ってくれた。
シロはいつも俺と香澄の相談相手だった。
まるで全てが分かっているかのように、いつも仲裁してくれていて。
俺は一人っ子だったから、女の子が欲しかった母さんは、「香澄ちゃん可愛いわー。何かあったら、すぐおばさんに言いなさいね!」と絶対的に香澄の味方。
シロもユキも、メスだったから、たまにすごく居心地が悪かった…。
全てはシロがつないでくれた縁。
そのシロはもういない。
「シロ、香澄、良いっていってくれるよな…」
腕で目を覆い、ふうっと息を吐く。
また少しシロとの思い出に浸っていると、玄関の開く音がした。
指輪のことを忘れて手に持ったまま、香澄を出迎える。
「おかえり。お疲れ」
そういうと、とびきりの笑顔で抱きついてきた。
「大ちゃん、誕生日おめでとう!!」
そう言って、ちゅっと軽いキスをする。
へへっと笑った香澄は、「これ、小さいケーキ買ってきたよ」と、近所のおいしいと評判のケーキ屋さんの箱を見せてくれた。
「頼んどいたの?」
「うん。付き合いだして10年の記念日でもあるしね」
「だな…」

![Sweet Honey Birthday[完]](https://www.no-ichigo.jp/assets/1.0.784/img/book/genre1.png)