それから二年後、なつとケイゴくんは別れた。


ずっとなつのそばにいたあたしはその報告を聞いてかなり驚いた。


「だんだん疲れてきたんよ」


付き合い始めて一年経ったあたりから、毎回毎回求めてこられるのが疲れてきたのだという。


「何かな、付き合いが長くなると体だけやなくて、心の繋がりの強さが欲しくなるんよ」


なつ曰く、体の付き合いだけでは愛が感じられなくなり、この頃から衝突することが多くなったそうだ。


もう少し、話し合いが必要だったかもしれんな。力無く呟いたなつの寂しそうな顔を、あたしは見つめることしかできなかった。


あたしは生まれてこの方彼氏がいた経験などないから、ただひたすら、なつの話に相槌を打っていただけだったけど。


「始めの頃は永遠にこの思いは続くもんやと思ってたけど、感情って厄介やな」

「うん」

「一夜からできちゃった関係やから特にそう思ったのかもしれん。なんかな、途中から、うちのこの気持ちは本当に恋とか愛の種類に入るんかなって思い始めてな」

「うん」

「そう思ったら、もうダメやよね。思い込むことで本当にそうなることって、感情の面ではけっこうあるやん。疑い始める時点で、その感情は終わっとるんや」

「でも、信じたかったんでしょ? 恋だって」

「信じたかったなあ。疑ってる半面、信じたかった。ほんま、めんどいわ、感情って」

「うん」


二人が別れた後、あたし達はそんな会話を交わした。