土曜日の朝9時に起きて、私は精一杯オシャレを考えていた。
「あぁ〜、どうしよう…!
どれにしよ〜」
いろいろ持っている服を引っ張り出しては、全身鏡の前で試着をしつみる。
けどなかなか決まらない。
「あぁ〜、もう!
これでいいや!」
私が選んだのは、白の小さな水玉模様のワンピースにと短パン。
後寒いし、レギンスをはいて、上にパーカーをはおって…。
「うん、よし!」
これでいいよね!
我ながらなかなか…。
後は軽く化粧でもしとこう。
机について、チークをしようとした時、コンコンと扉を叩く音がした。
「はーい」
返事をすると、ガチャっと開く音がして、ひょこっと4つ下の弟の健(タケル)が顔を出した。
「ねーちゃん、起きて…るね」
「何?」
「ちょっとシャーシンなくなっちゃってさ。
少しちょうだい」
「え、今?
うぅ〜ん、ちょっと待って」
化粧の途中なのに〜。
…まだ何もしてないけど。
「はい」
「ありがと」
私は健にシャーシンを渡した。
「……ねーちゃん、どっか出かけんの?
そんなオシャレして…。」
「え!?」
やばっ、まさかそこを指摘されるとは思わなかった!
「いつもなら化粧もしようとしないし…」
「ギクッ!」
うわーうわー、何でこの子そんな見てんの!?
弟だけど、何か怖いわ!
「きょ、今日は里津と買い物に行くの!」
「ふーん。
俺てっきり彼氏とデートなのかと思った!」
「……!!」
こ、こいつ…。
くったくのない、満面の笑みで言う健を、私は本気で殴りたいと思った。
私に彼氏いないこと知ってるくせに…!
「そういう健こそ、彼女いないからデートもできないよね」
さっきのお返しに、意地悪を言ってみた。
はずなのに…。
「何言ってんの?
俺いるし」
「へ?」
ふっと鼻で笑われる。
「先月できたし」
「え、でも今年も友達とクリスマスパーティーするって…」
「そんなの、秘密にする口実に過ぎないよ。
本当は彼女と一緒に過ごすから」
…ウソ〜…。
何なの、最近の子供って結構進化してない!?
「えっと、つまり彼女とクリスマス過ごすってことだよね?」
「そっ。
町のイルミネーション見ながらデート」
「……!」
なんて贅沢なデート!
私だって1度はやってみたいイベントなのに!
ビックリしすぎて、口が開いたまま、私は何もいうことができなかった。
「んじゃ、後でかえすから」
部屋から出るさい、ニヤリと笑われた。
……え、私4つも下の弟にバカにされた?
っていうか、負けた…。
まさか健にも彼女がいたなんて…。
これこそ私、1人ぼっちだよ…。
沈む気持ちのまま、とにかく行く準備をした。