「また泣いてるの?」

「!!」


突然聞こえた声に慌てて振り返ると、そこには秋君がいた。


「あ…秋君……?」


やだ、もうそんな時間なんだ?


時計を見ると今はちょうど5限目の授業の時間だ。


って……


「秋君授業は?」

「その言葉、そっくりそのまま返しますよ、先輩?」


普段は私に敬語なんて使わないのに、こういう時だけ敬語を使う秋君は意地悪だと思う。


確かに私が言える立場じゃないんだけども。


「私はいいの。でも秋君はまだ一年生でしょ?単位に響くんじゃ…」

「単位に一年も三年も関係ないよ。俺の事より先輩、いつも授業サボってるよね?」

「うっ……」


毎日サボってます。
それに三年になって拍車がかかってる。


「時間があれば絵を書いてたいの」

「先輩、本当に絵が好きなんだね」

「好き…もそうなんだけど…」


そこまで言って口をつぐむ。


絵は好き。
何も考えなくていい、私が望む世界をくれるから。


絵に描いたような幸せな世界を私の非力な手でも作り出せるから…