「そうだ、もうじきコンクールの結果が出るんでしょ?展示会、俺も行っていい?」

「うん!秋君が来てくれると心強いよ」



コンクールかぁ………
あの絵を送ってから1ヶ月。
早いもので、もう結果が出るのだ。



「雛の絵、絶対に選ばれてる」

「その自信を私にも分けてほしいよ」



今、こうやって絵の事を考えられるなんて思ってもみなかった。それだけ、私の中に他の事を考えられる余裕が出来たって事だよね。



辛くてしょうがなかった、あの日から………
前を向いて歩き出せる。


そうしたら、少し世界が広がった気がした。
こんな事をしたい、そんな風に生きる事に、この世界でやりたい事がたくさん思い浮かぶ。



「雛が画家になったら、俺雛の個展をプロデュースしたいな」

「ふふっ、じゃあ私達の夢だね!」


二人で、同じ夢を追いかける。
蛍ちゃんの夢も、私が一緒に叶えるんだ。



「雛、俺もう1つ夢っていうかお願いがあるんだけど」


秋君は不敵に笑い、私の左手をとった。


「え、何っ!?」


秋君、また距離が近いよ!!

どんなにキスをしたって、体を重ねた事があったって、私は秋君には一生ドキドキしてしまうんだろうなぁ…



「俺のお嫁さんさんになって?」

「!!」



お嫁さんって………
それが秋君のもうひとつの夢?


そんな………そんなのお願いされなくたって、喜んでお嫁さんになるのに……


嬉しすぎるよ………


「雛?ちょっと、黙らないでよ。俺、今すごいドキドキしてるんだから」


焦りだす秋君になんだか愛しさが込み上げる。


ーガバッ!!


「雛っ?な、何?」


抱きついた私に、秋君はしどろもどろになる。


いつもどこか余裕そうな秋君が、私だけに見せる無防備な表情。それがたまらなく好き。



「本当、可愛いすぎ…」


年下なのに、抱き締めてくれる手が力強くて、私の事を本当に考えてくれる人。


この手も、声も、仕草も………
もっと好きになって、これが過ごす時間の中で、私はもっと秋君を知りたいと願うんだ。



「秋君!」

「うん?」


首を傾げる秋君に、私は笑顔を向けた。


「喜んで、お受けします!」

「じゃあ、一生俺に守られてて?ぜったいに離してなんかあげないから」


「な、なんか脅迫みたいになってるよ?」

「みたい、じゃなくて、してるんだけど」



そんな甘い脅迫なら、それもいいかなと思う今日この頃。