「それくらい、いいでしょ?俺を弄んだんだからさ」


そうだね、少しでも最低な別れかたをして、後々にくる悲しみに後悔しないように……

お互いを欲しいと、手放したくないって未練が残らないように……


「わかった、秋君の好きにしていいよ…」


「じゃあ、ヤルから」


秋君は私の服を荒々しく脱がしていく。
そのままベッドに押し倒される。


「…………っ」

「んんっ!」



秋君は私の吐息も奪うように深く口づけ、舌を絡ませてくる。


もっと違う形で、秋君と抱き合えたなら………
どんなに幸せだっただろう………




涙が頬を伝い、シーツを濡らしていく。


「先輩っ………」

「あぁっ……」


秋君の手が、舌が、私の体を這って行く。
その度に体が痺れ、反応する。



「くっ!……うっ……」

「やっ…ぁ……………」


秋君、私といてくれてありがとう……
一緒にいて、私の心は本当に救われていた。



その反面、私は秋君を私の忘れられない恋の犠牲にしていいの?そう思っては目をそらして………


苦しかったけど、私はやっぱり秋君が好きだった。



「雛っ!」

「えっ………?…」


今、名前を呼ばれた………?
今まで、名前だけで呼ばれたことはなかったのに………


驚きに目を見開く私に、秋君は笑う。


「心の中で、いつも呼んでた……」

「そっ……か………」



秋君が、蛍ちゃんを忘れられない私を気遣ってくれていた事に気がついた。


私は、名前すら………呼ばせてあげられなかった……



「雛、いくね」

「あっ、あぁっ!!」


ーズンッ!!

体を、熱いモノで貫かれる感覚。
私の中で脈打つ感覚………



蛍ちゃんとさえ体を重ねた事はなかったこの体が、初めてを失った感覚……


それは酷い喪失に思えて、私は秋君と本当の意味で繋がれたんだ。そう、得るモノのほうが、大きかった。



「雛………初めて……だったの……?」


驚く秋君に、私は息苦しさを堪えながら、秋君に精一杯笑いかける。



「やっと……秋君に初めてをあげられた………」



蛍ちゃんにもあげなかった、私の初めて。
この世で出来た、もう一人の大好きな人へ…………