「ねぇ、先輩……聞いてる?」
「…………………………」
そもそも、秋君ってどこに住んでるんだろう。
ほとんど家に泊まりに来てるけど、ご両親は何も言わないのかな?
「おい、聞いてるー?先輩ー?」
まさか、複雑な家庭事情があるんじゃ!?
「うーん………チュッ」
「ひゃっ!!」
考え事をしていると、頬に柔らかい何かが当たった。
ま、まままさか!!
今のはキス………ですか?
フリーズしていると、秋君はむくれて私を軽く睨み付ける。
「俺の事無視しないでよ、何度も呼んだんだけど!」
「へ?あ、ごめんね、秋君!」
俺の事無視しないでよ………なんて、可愛いな、秋君。
「今日、俺のバイト先来ない?」
「え、いいの!?」
秋君のバイト先!
秋君の事を知るチャンスだ!
カフェでバイトする秋君、きっとカッコいいんだろうな……
「え、むしろ俺がいいの?誘っといてアレだけど、めんどくさかったら……」
「面倒なんかじゃない!私、秋君が働いてる所、見てみたい!」
私ばかり相談して、助けてもらうんじゃなくて……
秋君の事もっと知って頼ってもらえるようになりたい!
「見たい………とか、嬉しいんだけど」
照れているのか、口元を片手で覆い俯く秋君。
これは秋君が照れた時の仕草だ。
顔、真っ赤だなぁ………
秋君といて、焦るのは私だけじゃないんだね。
「ねぇ、秋君。嬉しいのは私のほうだよ」
「え?」
「秋君の事、もっと知りたいって思ってたから、すごく嬉しいの」
「………っ」
素直に思いを伝えたはずが、秋君は絶句して固まってしまった。


