「秋君……うまく、言えないんだけど……」

「いいよ、先輩の話しなら何時間でも聞きたい」



そんな秋君に私は笑顔を返す。


私は……秋君がきっと…好き。
でも……


「…蛍ちゃんは、私の大切な人なの」

「うん、知ってる…俺、ずっと雛先輩の事見てたから」


秋君は悲しげに笑う。

ごめんね、秋君……
こんな顔させたくないのに………


蛍ちゃんは私の全てだった。
大好きでもう二度と誰も好きにならないとさえ思った人。



「そんな大切な人を、私は死なせてしまった事がすごく辛くて、私は幸せになっちゃいけないって思ったの」


そう思わなければ、私はきっと死を選んだ。
幸せにならない事が私の罪滅ぼしで、それが反対に私の生きる理由だったから…



「でもね、秋君といる時だけは……すごく幸せな気持ちになれてっ……」


あぁ、まだ何も伝えられてないのに……
涙が止まらないっ……



「……いいから、いつまでも待つから、焦らなくていいよ」


「…うんっ……ごめん、だから…ね」



私は一度深呼吸して、秋君を見上げる。



「私が、秋君を好きになる事は……蛍ちゃんを裏切るみたいで……苦しいの…」



私は、一体どうすればいいの?
どうしたいの?


秋君が好き、それでも蛍ちゃんが忘れられない。
私は、蛍ちゃんに許してほしいのかもしれない。


私が…秋君を好きになってしまった事を……



「……先輩、俺の事……好きなの?」

「……………あ……」



好き、この気持ちがきっと「好き」という気持ちなんだ。
ずっと忘れてしまっていた熱くて切ない気持ち。


私は……私は秋君が……好き。


「先輩、ごめん。東先輩の事もあって簡単に言葉にできないのはわかってる。でも……俺にも先輩を守らせてよ。東先輩と一緒に」


「蛍ちゃんと………一緒に………?」


私は、蛍ちゃんを忘れなくてもいいの?
二人の人を好きになってもいいの?



「もう、幸せになっていいだろ、ずっと苦しんできたんだから。それを裏切りだっていう奴がいるなら、俺が許さない」

「……秋君……」


「だから、先輩。俺と生きようよ」



秋君が私に手を差し出す。

この手をとる事は本当はすごく怖い。
でもそれ以上に、嬉しかった。


「うん、秋君と生きさせて……」


だからその手をとった。
今はまだ、泣くことしか出来なくて、苦しい気持ちのほうが強いけれど…


いつか、秋君と歩んでいく道の先に、秋君と笑い合える未来があると信じたい。
だから、あの日から歩きだそう。


「俺の彼女になったからには、絶対に幸せだって言わせてみせるよ」

「……ごめん、ありがとう、秋君…」


ごめん、秋君、ちゃんと好きって言えなくて…
でもありがとう、好きって気持ちを思い出させてくれて…


そして蛍ちゃん。
私は、歩き出そうと思うの。
でも、その先に、蛍ちゃんは……

あの日にしかいない蛍ちゃん、私は、あなたをおいていってしまう事を許してくれますか………?