「ワイン、零れます」
「俺が洗ってあげるよ」
「あなたが言うと、いやらしい意味でしか聞こえませんね」
「お酒って、ベトベトするからね」
「だからそもそも、零れる要因を作らないでください」
依然として、酒以上に体にベタつく彼を押しながら、このままではワインの惨事が起きると、ミナナは赤い液体を飲み干した。
――もしかして、飲ませるために?
飲んだ後のしてやられた感を否定しようにも、空になったグラスを満たす彼は、尚も飲ませたいらしい。
片手でミナナを抱きつつ、床に置いたワインを取るために空ける手はないと言わんばかりに、自身のグラスに注いだものをミナナのグラスへ移す。
かちんと合わさるガラスの縁。乾杯のそれとは違う甲高い音がやけに響いたのは、雪が降っていたからか。


